神経動態医科学
スタッフ
連携教授 | 村山 正宜 |
---|
研究概要
当研究室では、知覚のセントラルドグマの解明を目指しています。外界情報は末梢の固有器官を通して脳に入り、逐次的・並列的に処理されます。この情報が、どこかの脳領域に到達し、ある種の神経活動が誘起された瞬間、我々は外界情報を知覚すると考えられています。では、知覚を直接的かつ最終的に誘起する脳領域はどこでしょうか。一領域なのか、多領域なのか(領域の疑問)。一領域なら、そこに到達するまでの経路は。多領域なら同期活動が必要なのかどうか(情報の流れの疑問)。どういった神経活動が知覚を引き起こすのか。細胞体の連続発火なのか、樹状突起スパイクなのか、またはグリア細胞の活動か(細胞活動の疑問)。どの程度の細胞が活動すれば知覚になるのか(閾値の疑問)。そもそも中枢神経系を研究するだけで知覚メカニズムを解明できるのか。我々はこれらの疑問を解明したいと考えています。五つある知覚の内、我々は触知覚(体性感覚)を扱います。正常な触知覚の脳内メカニズムの研究に軸を置いていますが、このメカニズムは、病理的な知覚、例えば慢性疼痛、皮膚炎などの痒覚、体感幻覚などにも関連している可能性があります。そこで当研究室ではこれら病理状態における触知覚メカニズムの研究も進めています。研究手法としては、精神物理学や多様な神経生理学的手法を組み合わせ、必要であれば新しい手法を独自に開発しながら研究を進めております。
研究項目
生理条件下における触知覚の皮質メカニズム
- 高次脳領域からの体性感覚野へのトップダウン入力の役割
- 高次視床から体性感覚野への入力の役割
- 皮質錐体細胞の樹状突起スパイクの役割
睡眠を利用した触知覚記憶の固定化メカニズム
- 皮質トップダウン入力とその受け手である樹状突起活動の役割
- 情動が記憶の固定化に与える影響。その回路メカニズム
病理的条件下における触知覚メカニズム
- 慢性疼痛の皮質メカニズム
- 痒覚の皮質メカニズム
- 体感幻覚の皮質メカニズム
新手法の開発
- 広視野2光子顕微鏡の開発
ハードコア神経生理学を標榜とし、単一神経細胞、局所回路、広域回路レベルで神経活動を捉えます。生理的、病理的状態における触知覚関連の回路メカニズムの差異や共通部分に着目することで、知覚のセントラルドグマの解明を目指します。
Publication list
- Ota K, Oisi Y, Suzuki T, Ikeda M, Ito Y, Ito T, Uwamori H, Kobayashi K, Kobayashi M, Odagawa M, Matsubara C, Kuroiwa K, Horikoshi M, Matsushita J, Hioki H, Ohkura M, Nakai J, Oizumi M, Miyawaki A, Aonishi T, Ode T and Murayama M: Fast, cell-resolution, contiguous-wide two-photon imaging to reveal functional network architectures across multi-modal cortical areas. Neuron 109 (11) 1810-1824.e9 2021.
- Miyamoto D, Hirai D and Murayama M: The Roles of Cortical Slow Waves in Synaptic Plasticity and Memory Consolidation. Front Neural Circuits 11:92, 2017.
- Miyamoto D, Hirai D, Fung A, Inutsuka A, Odagawa M, Suzuki T, Boehringer R, Adaikkan C, Matsubara C, Matsuki N, Fukai T, McHugh T, Yamanaka A and Murayama M: Top-down cortical input during NREM sleep consolidates perceptual memory. Science, 352(6291):1315-8, 2016.
- Manita S, Suzuki T, Homma C, Matsumoto T, Odagawa M, Yamada K, Ota K, Matsubara C, Inutsuka A, Sato M, Ohkura M, Yamanaka A, Yanagawa Y, Nakai J, Hayashi Y, Larkum ME and Murayama M: A top-down cortical circuit for accurate sensory perception. Neuron 86(5):1304-16, 2015.
- Palmer LM, Schulz JM, Murphy SC, Ledergerber D, Murayama M and Larkum ME: The cellular basis of GABA(B)-mediated interhemispheric inhibition. Science, 335(6071), 989-93, 2012.
- Murayama M, Pérez-Garci E, Nevian T, Bock T, Senn W and Larkum ME: Dendritic encoding of sensory stimuli controlled by deep cortical interneurons Nature 457, p1137-1141, 2009.
連絡先
住所
〒351-0198 埼玉県和光市広沢2-1
理化学研究所 脳神経科学研究センター
masanori.murayama@riken.jp